コミュニケーションに依存しなくなった訳はあの頃から
『レギュラー〇リットル入りました!』
地元のガソスタにて。
燃料切れで仕方なく入った地元のガソスタ。
いつもはガソリン補給していくのに今日は空っケツ。
3ヶ月ぶりに帰って初めて立ち寄るガソスタに…
あっ、ここって確か…確か居た気がする…
あれ?懐かし過ぎる音楽が聞こえてくるではないか!?
えっ(笑)なんだろこの感覚。ふわふわ浮く感じの鳥肌。
過去がフィードバックされてくの?
『サインお願いします』
あ、はい。
この声…コバヤシだよね?
店員の顔をきちんと見れない私。
エンジンをかけ、車をゆっくり前進させながら、バックミラーを確認した。
正確には、バックミラーに映る店員をだ。。
やっぱり。コバヤシじゃん…
と心で呟いた。
聞こえたのか。いや聞こえる訳はない。
コバヤシが男性と親密に寄り添った場面が蜃気楼に変わるみたいに何かが私の中でゆらゆら揺れていた。
本日晴天なり。
コミュニケーションにもっとも依存していたなと思う時期が高校時代だった。
何十年前の話しでしょうね( ˘ω˘ )
登下校グループ、クラスのグループ、学年グループと、とにかく仲間意識が強くて、個性のカタマリみたいな面白い子が集まっていた。
当時、仲間内では、ユニコーンや、かまいたち。ジュンスカ。ブルーハーツの追っかけなんて流行ってて。私は、ジュンスカの寺田呼人が好きでした。ジュンスカの後輩であったミスチルが始めてのライブをした時(ジュンスカのライブの後かな?)、『子供から大人まで愛される音楽をやりたいのでミスターチルドレンって名前にしました!』みたいなこと言って、横目で『ふ~ん』と見ていた私。どうかお許しください…
ちょっとしてから私は、オザケンとかピチカートファイブ。スチャダラとかコーネリアス。フリッパーズ・ギターにオリジナルラブ。いわゆる渋谷系が好きになっていったんだけど、なーんとなく皆に言えなかったんだ。
『友達やめる』とか言われそうで(笑)渋谷系って面倒くさそう。オシャレ気取りな自分?みたいな恥ずかしさ。でも、こっそりバックにCDとか入れて、学校の休み時間とかに、CDジャケットみてはニヤけてたと思う。
あ。このままだと話し、脱線するー。話し戻します。
私含む、登下校グループ5,6人。何となく仲間外れにしていた子がいた。喋るんだけど、皆の気分でなんとなく避けるみたいな。そんなのが続いた。仲間外れに何となくしていたその子が、高校をやめると知ったときは「いや私らのせいじゃないよね…?喋ってあげてたし」と皆が皆をかばった。喋ってあげてた…って…
本人も、「先輩と結婚するから」そう言ってた。
私たちはどこかで安心していた。
「結婚して、先輩のガソスタで一緒に働くんだ」と。
なんか、人生終わってね?と思うのは10代の私。
それは他人が決めることではないと知ったのは大分後の話しです。
高校をやめたコバヤシという女の子。
細くって弱弱しかった記憶。
仲間として認めないみたいな雰囲気作りをしていた私の記憶。
他にコバヤシに会うグループがあるよと遠回しに避けていたという記憶。
私たちが仲良くしてあげたら高校を辞めなかったかもしれない記憶。
「いや、そんなの関係ないし」とコバヤシは言っていたんじゃないかという推測。
記憶や推測のせいにしていくらでも逃げれるのってなんかね。
今のコバヤシに、何十年前の記憶なんて片隅にもないのかもしれない。
そういって、私たちは互いに忘れた振りをしてきた。
私たちは、どんなこともきっと覚えているはずなのに。
あの時のお互いの気持ち。
でもわざわざ掘り起こす必要なんてないもんね。
今がよければ。
今がよければ?
向こう岸に悲しみを置いて渡った人は喜びを手に入れたのかもしれない。
二度とそちらには渡らないと。
行ったり来たりしてるのは私なのだ。
小柄で長い髪の女性は言った。
『ありがとうございました』
見た目よりおっきな声の。
お辞儀をしてから上がる顔。
やっぱりコバヤシだった。
なんか凛としてる。
あの頃、〇〇〇〇。
向こう岸に置いてきたコバヤシと私のあの頃。
一緒に戻った気がしたのはこの音楽が流れていたから。
♪心のベスト10 第一位は こんな曲だった ダンスフロア―に華やかな光…
まさかのガソスタだよコバヤシ。
趣味、一緒だったのかもね。
コバヤシが高校を辞めてから、私はコミュニケーションに依存しなくなりました。
お喋りは必要な時だけ。
『レギュラー満タンでお願いします』
『ありがとうございます』
これだけで十分な大人になりました。
また行くねコバヤシのガソスタ。
ドキドキするけど。
次は何の音楽流れてるのかってさ。