不機嫌の吸引力が疲労の原因
ぎらぎら。
不機嫌、吸い取ります。
人の機嫌を敏感に察知してしまうことは分かってました。
人の負を吸い取ってしまう。
んー。気にしないで生きたい。
美容師の頃。
スタッフが後輩に注意している。注意というか怒っている。怒りは次第にエスカレート、くるまったティッシュペーパーを投げつける始末。の割に後輩はヘラヘラしている。なんだろぅなぁ..?私がイライラしてきた。なんでそんなに怒るの?と横目は待ち合いにいるお客様の小さな怒りを察知。
「あのお客様。脚、組み出したし様子がちょっと..すぐに席通して」レセプションに伝えると不思議顔でナンデ?とスルー。怒りが小さなうちに対処したほうがいいんだってぇと...5分経過。足を組むという行為は気が大きくなってきた証拠。...7分経過。
お客様の下目使いはイラつきはじめ。
「ちょ。腕も組み出したから早くご案内して」はい、なんでですかぁ?ちょっと忙しくてぇまだ5分しかお待たせしてないから大丈夫ですよぉ。のおっとりレセプション。..5分どころか10分経過。怒りを組み出した腕でブロックしているのだ。
最終的にお客様は背筋をピンと張り出した。姿勢を正したのではない。自分をアピールしはじめたのだ。
ペコちゃん顔きたよ。ベロが出たよぉの瞬間、『MUGO・ん..色っぽい』を思わせる茶髪ロングヘアをかきあげる。♪言いたいことならどれくらいあるかわからなくあふれてる♪と私の心でなぜか流れる工藤静香。そんな歌知らねぇよって言われるよね。そんな私の心を知ってか知らずに..
すくっと立ち上がるお客様。中指で弾かせるロングヘアが揺れた。
マダァー⁈
ずっと待ってるんだけドォー⁉︎
がね、くるよくるよ。きっとくる‼︎ 担当しているお客様を待たせ、その呼吸にわたしダイブ。
「〇〇様ー!大変お待たせいたしましたぁ」
間に合ったー。
苦虫を噛みしめ眉間に何十ものシワを寄せ言い返すことなんてできないであろう老婆と化する私。
「あっ..はい」と老婆に圧倒される工藤静香似ギャル風ママ。その瞳に一瞬でも小汚い風美容師が映ればほら「可哀想」が心に湧くもの。相手は言葉を失うのだ。中腰の私は続く。
「お時間大丈夫ですか?」
「いやっ、大丈夫じゃないしっ..」
♪言いたいことならあなたには..あとからあとからあふれてる 私意外とおしゃべりだわ
このタイプ。このタイプに大丈夫ですか?なんて聞いちゃいけなかったんだって私。何かを思っての含み顔、腕は組みっぱなしの身体がイライラを表す工藤静香似ギャル風ママに私は言った。
「〇〇様の貴重なお時間を奪ってしまい申し訳ございません。今すぐご案内いたします」
中腰の老婆は任務をやり遂げたとばかりにお客様のお荷物をお預かりし他のスタッフへと。ふぅ、大丈夫かな。いや、もうひと仕事だ。
「このバッグ。かわいーですね!センス良過ぎです」
産まれたてのヒヨコを抱えるようにお客様の手荷物に感想を入れてみたり。その後は他のスタッフの手により倒されるまで(シャンプー台)雑談...
わたし、トイレへ消えた。
というか逃げた。
負を完全に吸い取った鏡の中の私。いや、老婆だよぉ。これで美容師とか名乗れない。トイレを後に 笑顔・ポジティブ再開。
......数時間後。
工藤静香似ギャル風ママとお会計時に居合わせた私。
あっ..微笑まれたー (^ ^)
♪目と目で通じ合う
そんな感じ、確かに色っぽい人。笑み返し。退店時、めっちゃご機嫌じゃないですか工藤静香。
スタッフに、「〇〇さんが声かけしてくれたおかげでご機嫌になってくれたみたいですー」
って。なんでアナタそんなにおっとりで空気読まないの?まじ憧れるよ。
はっ。疲れた。 疲れたよー。
帰宅したら私、不機嫌ですよ。なんだろコレ?不機嫌もらってきたみたいな。
いらいらいらいら。
イライライライラ。
疲労が滲み出る老婆から不機嫌を撒き散らす鬼ばばへと..
「さっさと寝ろっ‼︎」
ザワつく子供部屋が一瞬で静まりかえるのでした。子供に八つ当たりが一番ダメなやつ。それ。
わたし。
接客業辞めてよかったんだと思う。キャパオーバーを認めたんだ。人間の負のオーラを間近で感じやすいし、髪の毛を触るということはその人の温度がもろに伝達される。触られる方も気を許して それがやがて 何でも許して になることも。不機嫌を吸い取ることは接客業としては当たり前だけど、ダイソン並みの吸引力半端ない人にとってはつらい。掃除機のゴミ、溜めちゃうダイブだもんな私。毎回必ず捨てなさい!と自分に。接客業辞めてしばらくしたら人間付き合いが広がってったのも事実。これはまた別の機会に..